RAxML の例題
〜入門編〜

2020 年 4 月 2 日 改訂

RAxML は最尤法によって系統樹を推定するソフトウェアです.ここでブートストラップと最尤樹推定を同時に行う解析 (Stamatakis et al. 2008) の手順を説明します.より詳細な説明はこちらをご覧下さい.解析の原理については Yang (2009) などを参照してください.

以下から例題をダウンロードしてください.
例題: raxmlExampl.tar.gz

使用するソフトウェア
  系統樹探索

系統樹の表示

テキストエディタ
[Mac] RAxML FigTree TextWrangler
[Windows] RAxML FigTree サクラエディタ

Xcode の準備
[Mac のみ]
使っている Mac に make が入っていない場合は,こちらを参照して Xcode のインストール」を参照して Xください.

解答プログラムの準備

[Windows のみ]
Win の場合は,.tar ファイルの解凍に Lhaplus が必要です (ただし,右クリックから .tar ファイルを解凍できる場合もあります).




フォルダ属性の変更

必要な場合のみ.

[Mac]
カーソルで raxmlExample フォルダを選択して,command + I でこのフォルダの情報を見ます.右下にある鍵マークをクリックしてパスワードを入力し,共有とアクセス権からアクセス権を「読み/書き」にします.


[Windows]
まず拡張子 (例えば .exe) を表示します.以下のチェックを外してください. 見当たらない場合は「拡張子」で検索してください.

コントロールパネル > フォルダと検索のオプション > 表示 > 登録されている拡張子は表示しない

フォルダと内部に含まれるファイルの属性を変更します.raxmlExample フォルダを右クリックし以下のチェックを外します.

プロパティ > 読み取り専用



エディタの準備
[Mac]
TextWrangler, かあるいは mi が便利です.ここでは TextWrangler を使います.詳しくはこちらを参照してください.

注意:
1. RAxML などコマンドラインのプログラムで解析を行う場合は,インファイルの改行コードに注意してください.
2. TexWrangler は、2018 年あたりからバージョンアップを中止し、新しい Mac での利用は推奨されていません。全く同じ機能を持つ BBEdit (free version) をご利用ください。





[Windows]
サクラエディタを使います.


RAxML のダウンロード

[Mac と Windows]
RAxML をこちらからダウンロードします (こちら).2016 年 10 月の時点では RAxML8.0.0 です.



Mac は,以下の図で右にある Clone or Download をクリックしてください.

Windows は,左にある WindowsExecutables_vX.X.X をクリックしてください (X の数字はバージョンによって変化します).その後,raxmlHPC.exe をダウンロードしてください.




[Windows]



RAxML のコンパイル

[Mac]
ダウンロードした standard-RAxML-master.zip をダブルクリックし,解凍します.

ターミナルから,解凍してできた standard-RAxML-master に入ります.以下の図を参照してください.ターミナルの場所は「アプリケーション > ユーティリティ > ターミナル.app」です.

ターミナルに,

make -f Makefile.gcc

と入力してください.


すると,standard-RAxML-master フォルダに raxmlHPC というプログラムが作成されます.これらを raxmlExample フォルダにコピー & ペーストしてください.


[Windows]
ダウンロードして得た,

raxmlHPC.exe

というプログラムを,以下の図を参照して raxmlExample フォルダにコピー & ペーストしてください.コンパイルせずにそのまま使えます.





コマンドプロンプトから raxmlExample フォルダに入ります.コマンドプロンプトの場所は,

プログラム> アクセサリ> コマンドプロンプト

です.



解析の実行


インファイル

[Mac と Windows]

raxmlExample
フォルダに以下のファイルをエディタで開いて確認してください.

phylip.txt


解析の実行.

[Mac と Windows]
コマンドプロンプトから 「cd」 コマンドを用いて raxmlExample フォルダに入ります.

cd xxxx/xxxx/raxmlExample

[Mac]

[junINOUEpro:~]$ cd /Users/junINOUEpro/Downloads/raxmlExample
[junINOUEpro:raxmlExample]$ ls
command.sh phylip.txt raxmlHPC.exe
fasta.txt raxmlHPC* simpleDNApartition.txt



[Windows]
以下の図を参照して,アンダーラインで示されたアドレスをコピー&ペーストしてください.



dir でフォルダに含まれるファイルを確認します.

dir

[Mac]
ターミナルから,

   ./raxmlHPC -f a -m GTRGAMMA -p 12345 -x 12345 -# 100 -s phylip.txt -n outfile

と入力して raxml を走らせてください.
(command.sh ファイルにコマンドが書いてあるので,「sh command.sh」でも解析が走ります).


[Windows]

raxmlHPC -f a -m GTRGAMMA -p 12345 -x 12345 -# 100 -s phylip.txt -n outfile

と入力して raxML を走らせます.

注意: アウトファイルは「RAxML_」で始まる名前のファイルです.これらのファイルがフォルダ内部にあると,解析は始まらないです.

アウトファイル

[Mac と Windows]

RAxML_bestTree.outfile

最尤樹

RAxML_bipartitions.outfile

ブートストラップ値付きの最尤樹.

RAxML_bipartitionsBranchLabels.outfile

ブートストラップ値付きの最尤樹.上と同じだがフォーマットが異なる.

RAxML_bootstrap.outfile

100 本のブートストラップ tree.

RAxML_info.outfile

行われた解析のセッティング.


Newick format とは


得られた結果の表示

RAxML によって作成された RAxML_bipartitions.outfile ファイルを FigTree で読み込むと,以下のようなファイルが得られるはずです.

[Mac と Windows]
FigTree
をダウンロード&インストールしてください.




[Mac と Windows]
系統樹を描画します.RAxML_bipartitions.outfile ファイルを FigTree で開いてください.

練習1:MAFFT でアライメントする

[Mac と Windows]
MAFFT の Onlineversion でアライメントしたファイルを RAxML で解析してみましょう.
以下の Fasta 形式のデータを MAFFT の website にある所定の場所にコピー & ペーストしてください.

>Cow
atggcatatccatacaactaggattccaagatgcacatcaccaatcatagaagaacta
>Carp
atggcacacccaacgcaactaggttcaaggacgcggccatacccgttatagaggaactt
>Chicken
atggccaacactcccaactaggctttcaagacgcctcatcccccatcatagaagagctc
>Human
atggcacatcagcgcaagtaggtctacaagacgcacttcccctatcatagaagagctt
>Loach
atggcacatcccacacaattaggatccaagacgcggcctcacccgtaatagaagaactt
>Mouse
atggcctaccattccaacttggtctacaagacgcacatcccctattatagaagagcta
>Rat
atggcttaccatttcaacttggcttacaagacgcacatcacctatcatagaagaactt
>Seal
atggcatacccctacaaataggcctacaagatgcacctctcccattatagaggagtta
>Whale
atggcatatcattccaactaggtttccaagatgcgcatcacccatcatagaagagctc
>Frog
atggcacaccatcacaattaggttttcaagacgcagcctctccaattatagaagaatta



以下のように種数と配列の長さを行頭に付け加えて,phylip1.txt という名前で raxmlExample フォルダに保存してください.

得られた結果を RAxML で走らせてください.

データが大きい場合は,エディタの検索置換を使ってデータ形式を変更します.詳しくはこちらを参照してください.


練習2:Phylip 形式を Fasta 形式に変換する


以下の Phylip 形式のデータをコピーしてエディタで保存してくだい.

59 10
Cow atggcatatccatacaactaggattccaagatgc-acatcaccaatcatagaagaacta
Whale atggcatatcattccaactaggtttccaagatgc-gcatcacccatcatagaagagctc
Mouse atggcctaccattccaacttggtctacaagacgc-acatcccctattatagaagagcta
Rat atggcttaccatttcaacttggcttacaagacgc-acatcacctatcatagaagaactt
Human atggcacatcagcgcaagtaggtctacaagacgc-acttcccctatcatagaagagctt
Seal atggcatacccctacaaataggcctacaagatgc-acctctcccattatagaggagtta
Frog atggcacaccatcacaattaggttttcaagacgcagcctctccaattatagaagaatta
Chicken atggccaacactcccaactaggctttcaagacgcctcatcccccatcatagaagagctc
Carp atggcacacccaacgcaactaggttcaaggacgcggccatacccgttatagaggaactt
Loach atggcacatcccacacaattaggatccaagacgcggcctcacccgtaatagaagaactt


行の始めに「>」を入れます.
[Mac]


[Windows]


[Mac と Windows]
最初の行,「>59 10」 を削除してくだい.最後に「>」だけからなる行があったら,これも削除してください.


種名と配列の間にあるスペースを改行に変換します.
[Mac]
[Windows]


[Mac と Windows]
Fasta 形式への変換が完了したはずです.

練習3:Web Server で計算する

RAxML BlackBox



質問と回答

系統の推定法やアプリケーションには何種類もありますが,どう違うのでしょうか.どれを使えば良いでしょうか.

系統の推定法:系統樹の推定方法には,距離法,再節約法,最尤法,ベイズ法があります.解析のスピードは,およそこの順序です.正確さは人によって意見が異なるところですが,種間以上の系統解析でよく使われるのが,最尤法とベイズ法だと思います.詳しくは,井鷺&陶山 (2013) の P157 や,Yang (2009) の P76 あたりを参照してください.
アプリケーション:最尤法なら RAxML,ベイズ法なら MrBayes が最も使われているソフトウェアの一つです.解析の速度と簡便さ,そして正確さから,私の場合は RAxML を使って様々な解析を行っています.MrBayes は論文投稿前の最終的な確認作業に使っています.


解析パイプライン

RAxML を用いた解析パイプラインの説明はこちらを参照してください.

参考文献

井鷺裕司, 陶山佳久. 2013. 生態学者が書いたDNAの本 ―メンデルの法則から遺伝情報の読み方まで.文一総合出版.Amazon
Stamatakis, A. 2016. RAxML step-by-step tutorial. Web.
Stamatakis, A. 2016. The RAxML v8.2.X Manual. PDF.
Yang , Z. 2009. 分子系統学への統計的アプローチ・計算分子進化学.藤博幸, 加藤和貴, 大安裕美,訳. 東京,共立出版. Amazon.